安善寺(益子町)概要: 鶏足山松林院安善寺は栃木県芳賀郡益子町大平に境内を構えている浄土宗の寺院です。安善寺は鎌倉時代初期の建久5年(1194)に平貞能が当地の地頭である河原小藤治光直の協力を得て創建されたと伝えられています。平貞能は、平家の有力家人で、源平の合戦にも従軍し大功を挙げますが次第に不利となり、九州に退いた際に平家軍を離脱、その後、貞能は幼少の源頼朝を東国に逃した功績から助命嘆願が認められ、縁のあった宇都宮城(栃木県宇都宮市)の城主である宇都宮朝綱を頼り東国に落ち延びたとされ、その後の詳細は不詳な事から当寺をはじめ、貞能縁の寺院や史跡が東国には点在しています。
安善寺では創建して以降も当寺に留まり、主家であった平重盛夫妻の供養を続け、文暦元年(1234)に死没(戒名:安善院室中大岩居士)、遺骸は境内の一角に葬られ供養の為にその上に地蔵堂が設けられたと伝えられています。その後、火災などで衰微しましたが、室町時代の応永6年(1399)に良月上人(大沢円通寺開山した良栄上人の高弟)により再興され現在に至っています。
現在の安善寺本堂は江戸時代中期の享保15年(1730)に再建されたもので、木造平屋建て、寄棟、鉄板葺き、平入、桁行5間(13.81m)、梁間5間(11.47m)、正面1間(2.04m)向拝付き、外壁は真壁造り鏝押え、正面花頭窓付、内部は外陣、内陣が床の段差によって分けられ、内陣には1間の須弥壇が設けられ本尊の阿弥陀三尊像が安置、廊下はウグイス張り、天井は格天井、欄間には精緻な彫刻、江戸時代中期の寺院御堂建築の遺構として貴重な事から昭和56年(1981)に益子町指定文化財に指定されています。
安善寺境内全域は本堂はじめ、天然記念物に指定されている枝垂桜(伝:江戸時代中期の本堂再建時に植樹)・カヤ(伝:江戸時代中期の本堂再建時に山門の代わりに植樹、樹高20m、幹周90cm)・イロハカエデ(伝:江戸時代中期の本堂再建時に植樹)・ヒイラギ(伝:平貞能の供養の為に植樹、樹高3m)の古木、浄土庭園、平貞能の供養塔(100回忌の元弘3年:1333年に建立)などがあり、歴史的にも貴重な事から昭和52年(1977)に益子町指定史跡に指定されています。山号:鶏足山。院号:松林院。宗派:浄土宗。本尊:阿弥陀如来。
【 参考:文献等 】
・ 現地案内板-益子町教育委員会
・ 現地案内板-環境省・栃木県
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